iPhone14 Pro Maxによる長時間露光での撮影

2022年9月16日iPhone14シリーズが発売されました。Proシリーズに関してはDynamic Islandとカメラ機能の強化が目玉になっている印象を受けました。

 

昨年、iPhone13 Pro Maxが発売された際、iPhoneでも長時間露光ができることと、それによって撮った写真の掲載を行ったところ大変好評だったため、今回iPhone14 Pro Maxでも撮影をして掲載したいと思います。


iPhoneでの長時間露光について

Appleの純正カメラアプリは暗い場面でナイトモードという長時間露光(スローシャッター)を行うことができる機能があります。通常手持ちでは長くても10秒程度までしか出てこないのですが、iPhoneが三脚等に固定されたことを検出して、自動的に10秒以上30秒以下の長時間露光撮影を行うことができるようになります。

この機能はナイトモードが搭載されているiPhone11以降で(Apple公式ヘルプより)利用することができます。


詳しくは前回の記事(リンク)に書かれていますので、ぜひご一読いただければと思います。


三脚に限らず、どこかに立てかけたり、どのような形でもいいので固定するとこの10秒以上露光できる設定を出すことができるので、ぜひ試してみてください。

AOKA CMP163CLカーボン三脚及びAOKAスマートフォン雲台MPC4.0に搭載したiPhone14ProMax



iPhone14ProMaxで長時間露光した結果

早速、長時間露光で撮影(ナイトモードで撮影)した写真を見ていきたいと思います。

後述しますが、普段ミラーレス一眼の写真を見慣れているので、この写真が撮って出しの画像かと言われると、とてもそうとは思えません。この独特の感じは、好みが分かれると思います。

【画像をクリックすると原寸大表示となりますが、容量が大きいため携帯回線の場合はご注意ください。】

 



実際に撮影で使った感想ですが、かなり暗いところでも今までより気軽に取れるようになったなという感じがします。

iPhone13ProMaxとの比較は今回はしませんが、特にメインカメラを使っているときは変わったなという実感がありました。

この辺りはメインカメラのセンサーサイズが65%大型になったこと、クアッドピクセルセンサーや後処理がいろいろ変わったことも効いてきてるのかなと感じます。

AOKA CMP163Cカーボン三脚及びAOKAスマートフォン雲台MPC4.0に搭載したiPhone14ProMax

以前からそうだったのですが、設定が場面に応じて自動的に変わってしまうのはなかなか慣れるのが大変そうです。画角を調整していたら光源が入ってナイトモードがオフになったり、マクロモードがオンになったりならなかったり。

普段隠れている設定が矢印を押すと出てくるのですが、スワイプしないとすべての項目を確認できないためこの辺りは一覧で表示できるよう改善があってもいいかもしれません。


設定・使うモードによっては記録形式がRAWではなくなってしまう場合もあり、特に警告なくHEICでの記録に移行されます。これは撮影中気がつかず後から見返していて驚くことがありました。できればこの記録形式を固定した形で利用できるオプションを提示する設定が欲しいところです。


ここまで書いて思ったのですが、もうProモデルに関してはApple純正でPro向けの純正カメラアプリを出した方がいいのではないでしょうか。画像処理にかける上で何らかの条件を揃える必要がある等事情があるのかもしれませんが、どうしても今のところカメラのダイヤルで言うところのAUTOで撮っている感じが否めません。もちろん、このレベルのAUTOは本当に素晴らしいのですが、そうでない場面にも公式アプリとして対応できるようにしてあると、Proの名前により説得力が出てくると思います。



iPhone14 ProMaxのカメラスペックについて気になった点

詳細なスペックについては既にたくさんの記事が存在しますので、発表会の動画を見ながら筆者が気になった点・引っかかった点を取り上げていきたいと思います。


発表会動画(カメラ、特に写真については1:19:08〜となっています)

 


iPhoneのカメラの画質向上評価の難しさ

近年、iPhoneを筆頭に”コンピューテーショナルフォトラフィー”の領域が急速に広がっています。あまりにも広い分野で抽象的な言葉なので、色々な解釈がありますが、ざっくりいうと以下のような感じです。


従来は輝度やコントラストなどを自動調整してくれるにとどまっていましたが、例えばiPhoneであればLiDARセンサーを搭載し深度情報をとり後から被写界深度の変化をシミュレーションして変える事ができるようになったり、今写されたものが人なのか、景色なのか、食べ物なのかなどを機械学習なども使いつつ高精度に予測し、それに適したレタッチを加えるというものです。


Xiaomiが出しているこの動画の方がより視覚的でわかりやすいかと思います。

 


今回の発表でも自動処理の一端が紹介されていました。写真の印象を大きく変える処理はフィルターとして、明示的に人間が後から加工する形になっていますが、ただ標準モードで撮っただけでもさまざまな処理が行われており、わかりやすいところで言うとダイナミックレンジを拡張したり輪郭を検出しその部分だけノイズ低減処理を弱めたりしているようです。

他にも色々行われていると思いますが、こういった事があるので先述した通り”撮って出し”の画像ですか?と言われるとこれを撮って出しというのはかなり抵抗を感じます。


さらにもう一つ、こちらの方が筆者は画質の話をややこしくしていると思っているのですが、iPhoneのディスプレイの綺麗さがカメラの評価を底上げしてしまっているのではないかという点です。


iPhoneに搭載されているディスプレイは非常に高性能なもので、あくまで推定ですがカメラモジュールより高価とまで言われています。(https://gigazine.net/news/20211029-iphone-13-teardown/ )有名な話ですが、センサーはソニー製です。ソニーのスマートフォンにも搭載されていますし、画像処理の技術の一部はもともとソニーのカメラでも使われていたものです。


しかし、このディスプレイは他のどこでも見る事ができないApple特注品です。プロの現場ならともかくとして、なかなか一般的にこのレベルのディスプレイで画像を見る機会はありません。

そして、カメラに比べディスプレイはそこまで強調されていませんが、目に見える形で進化していると思います。特に液晶からOLEDへの変化は凄まじいものでした。


iPhoneで写真を撮ったほとんどの方は、おそらくそのiPhoneの液晶で写真も見るでしょうから、この液晶の進化はそのまま写真の画質向上として捉えられます。


穿った見方だと自分でも思いますが、一般的に言われている”iPhoneのカメラの画質が向上した!”は、ディスプレイの進化が6割、カメラの進化が4割ぐらいなんじゃないかと思っています。


この上記2点が普通のカメラの事情と全く異なるため、単純比較できず、評価を難しくしていると言う事ができるでしょう。もちろん写真の鑑賞のほとんどがスマートフォン上で行われている現代で、上記2点のような事があるから意味がない!とは全く思いません。しかし、フルサイズセンサー搭載のカメラなどと画質やノイズを比べるということは大変難しいのではないかと思います。


48MPは24mmのメインカメラのみ

今回の発表会では48MP(4800万画素)での撮影が可能になったと大々的に宣伝されています。また、クアッドピクセルセンサーと言われているセンサーと新たなPhotonic Engineよって4つの画素を1つにまとめ12MPの画像を作るという機能もかなり前面に出されていました。


しかし、この撮像素子が搭載されているのは24mmの標準レンズがついている”メインカメラ”のみになり、そのほかの3倍望遠と呼ばれている77mm及び超広角と呼ばれている13mmのレンズがついている撮像素子は12MPのセンサーが搭載されています。


正直”メインカメラ”と言われてもわかりにくく、短めの紹介記事やニュースなどを見るとこの点の説明が欠落しており結構誤解して買っている方もいるんじゃないかなと思ってしまいました。



クアッドピクセルセンサーの詳しい解説

発表会でクアッドピクセルセンサーについての説明がありましたが、より詳しく開発元のソニーセミコンダクタソリューションズ モバイルシステム事業部 副事業部長 小関氏が以下のITメディアの記事内で説明されているで、とてもわかりやすいです。ぜひご一読ください。

ITmedia スマホカメラが進化した裏側で起きていること ソニーのイメージセンサー開発部隊に聞く

 

12MPの2倍望遠はただのデジタルズーム

今回カメラアプリを起動すると、4つボタンが出てきます。

この倍率が書かれたボタンはカメラが初めて2台搭載されたiPhone 7 Plusよりあるもので、カメラを切り替える事ができるようになっています。この部分を長押しするとダイヤルが出てきて、自由にズームする事ができます。


しかし、この最初から出ている数字以外の部分はデジタルズームによって実現される焦点距離なので画質が大幅に劣化します。そのため、画質を気にされる方は最初からボタンとして表示されている焦点距離を使うようにしているかと思います。


上記定義だと、カメラが3台しか搭載されていないのにも関わらずボタンが4つあるのはおかしな事です。この点について、公式サイト(https://www.apple.com/jp/iphone-14-pro/ )ではどのように書かれているかというと


Proのカメラシステムは、クアッドピクセルセンサーにより、3つの固定焦点レンズをはるかに超える性能を手に入れました。2倍望遠が加わり、ズームオプションは0.5倍、1倍、2倍、3倍の4つに。


この新しい望遠機能は、クアッドピクセルセンサーの真ん中の12メガピクセルを使用。デジタルズームを使わずに、フル解像度の写真や4Kビデオが撮れます。

Apple.“iPhone 14 ProとiPhone 14 Pro Max - Apple(日本)”.Apple(日本).https://www.apple.com/jp/iphone-14-pro/, (2022/09/16 参照)


とあります。つまり、48MPのメインカメラをデジタルズームしてるだけなのですが、それを12MPが今まで標準の画質だったので”フル解像度の写真”が撮影できると言っているわけです。


もちろん何がフルでそれに対してどうなったらフルじゃないなどという定義はないのですが、発表動画中でこの2倍のボタンを紹介するグラフィックはあえて、他のボタンの光学性能の紹介と同じようにf値やレンズの枚数まで書いてカモフラージュしています。仕様表(https://www.apple.com/jp/iphone-14-pro/specs/ )も光学ステップズームと同じ書き方をしており、一言”クアッドセンサーを活用”と書いてあるだけです。


これはちょっと宣伝の表現の域を超えていて、嘘じゃないけど騙しにきてるなと思いました。


以上、写真に関する発表を見ていて、気になった点について書かせていただきました。



iPhoneは写真を撮影できる機械というよりも、生成してくれる機械といった方がいいように感じます。世界で初めてデジタルカメラを開発されたスティーブ・サッソンさんは近年のインタビューで、写真の役割が変わり会話の一部のようになってきていると表現されています。(https://www.tokyo-np.co.jp/article/184737 )そのように写真の役割を変えたのはiPhoneです。そのiPhoneが写真を撮影するという根本的な部分を少しずつ変えようとしているように感じます。レンズ交換式のカメラを片手に持ちつつ、その変化を楽しみたいと思います。


 

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