動画撮影におけるスチールカメラとビデオカメラの棲み分け

カメラマン 柳瀬雅史様へのインタビュー 第2回

今回動画撮影におけるスチールカメラとビデオカメラの棲み分けについてお話しいただきました。

近年、スチールカメラには当然の様にビデオ機能が付き、フルサイズセンサーながらもそのコンパクトさから、動画撮影用に購入される方も少なくありません。 そんな中でのビデオカメラの立ち位置やその違いについて、実際に現場でも使用されている観点も交えながら、お話をお聞きしました。

 

柳瀬 雅史

ヤナセ映像企画 代表取締役
1965年、東京生まれ。鞄手帳のメーカーに2年半ほど勤務後、24歳で映像業界へ転身。27歳で独立し、テレビカメラマンとなる。

以降、ドキュメンタリー番組等を経て、フリーランスとして自然番組を中心に活躍中。NHK「ダーウィンが来た!」や「ワイルドライフ」など国内外を問わず撮影を行っている。

 

 

第一回記事「AOKAのシステマティック三脚を、2年間使い倒した結果」(新しいタブが開きます)

スチールカメラとビデオカメラの今後の普及について

主にテレビ番組の撮影を担当するカメラマンとしての意見です。ビデオカメラとスチールカメラに対しての捉え方ですが、基本的には棲み分けが進んでいくと考えています。

Photo by Brent Ninaber on Unsplash

最近、番組の撮影にスチールカメラ(α7sⅢ等)をよく使います。その理由としてはいくつかありますが、ジンバルなどに乗せて、ブレのない動きのある画が撮りやすいことや、単純に明るくキレの良い単焦点レンズで被写界深度の浅い映画のような表現がやりやすいこと、撮影現場が狭い場合、単純にカメラが小さい方が有利であることなどが挙げられます。

しかし、全ての撮影をスチールカメラでできるわけではなく、大きめのシネマカメラ(PXW-FX9等)や2/3 B4レンズを使用するENGと呼ばれる大型のビデオカメラ(PXW-Z750等)でこれまでのように撮影した方が有利なこともまだまだあります。そこは使う側が作品ごとに臨機応変に使い分けることで、今のニーズに対応しています。

内蔵NDフィルターが搭載されているかどうかが大きな分かれ目

動画撮影という観点でカメラを見たときに注目すべき大きなポイントがあります。

それは内蔵NDフィルターがあるか無いかという点です。最近では電子NDフィルターが搭載されていますが、このフィルターの有無では使い勝手を大きく左右します。プロ用のB4マウントENGカメラには普通にNDフィルターが内蔵されていますが、スチールカメラにはほとんど搭載されていません。

ところがSONYの最近のシネマカメラ(PXW-FX9FX6)には第二世代の電子NDが搭載されていて使い勝手も良くて感心します。

ワンオペでスチールカメラを使い映画のようなショットをテンポ良く撮影するには、深度の浅い明るいレンズを使い、光の状況が変わっても絞りを変えずに露出をコントロールする必要があります。

Photo by Chris Lynch on Unsplash

屋内でも屋外でも同じ質感で撮影するには、どうしてもNDフィルターを付けたり外したりという手間があります。そんな時にPXW-FX6のようなスチールカメラと、あまり大きさの変わらないボディーサイズでフルサイズイメージセンサーのカメラに電子NDが搭載されているというのは大変使いやすいと思います。

 

センサーサイズの使い分けはどうされていますか?

僕が撮影するのは自然番組が多いのですが、撮影するターゲットによって使うカメラやレンズもさまざまです。

例えばアフリカで大型野生動物を主に撮影するときは2/3インチセンサー大型カメラに35mm換算4000mm相当のB4マウントの超望遠レンズ等が活躍します。また、小さな昆虫などを撮影するときは、スチールカメラにマクロレンズで動画撮影といった感じで、まるで違う撮影機材セットになります。

カメラのセンサーサイズを考える時、鳥の撮影のように超望遠レンズがないとどうしても必要なショットが撮れない時などは、2/3インチのような小さいセンサーの方が望遠に強いので有利です。

一方、山の上で朝焼けと高山植物の花の美しいショットを狙うといったときなどには、ダイナミックレンジの広いフルサイズセンサー搭載のスチールカメラの方が綺麗な画作りには圧倒的に有利です。つまり当たり前なんですが ”適材適所” ということなんです。以前はなんでも大型ショルダーカメラ(B4マウント2/3センサー)で撮影していました。

まあ深度の浅い映画風の撮影以外はなんとかなっていたというのが当てはまる気がしますね。でも最近のYoutube などに見られるようなシネマティック表現というか、一眼ムービーなんて言われるような雰囲気のある映像が一般化している現在では、テレビ番組にもその流れが少なからず影響しています。

そういうニーズにメーカーも答えるように、小さな機材でもシネマティック表現ができる機材を出してきているので、テレビ番組撮影でも積極的に使うようにしています。

大型センサーのダイナミックレンジの事に触れましたが、自然番組撮影の時に番組によってはlog撮影を指定されます。番組の編集時にカラーグレーディングをして、きちんと全体の色味やトーンを手間をかけて調整します。

大型センサーのダイナミックレンジは野外撮影時の圧倒的なアドバンテージです。しかし残念ですがテレビ番組全体で見ると、そこまできちんとやっている番組はごくわずかです。(ちょっと悲しい)

一方Youtube上では個人で大型センサー機でlog撮影をして、カラーグレーディングをして仕上げた作品が多数上がっています。内容はさておき、なかなか雰囲気のあるかっこいい作品が多くて驚きます。残念ながらちょっとテレビは置いていかれてる感は否めませんね。

もっとチャレンジしなくてはと思います。

 

マイクロフォーサーズセンサーについて

以前は僕もPanasonic GH4を現場でよく使っていました。超ワイドレンズを使って森の中で移動ショットを撮影するときなどに、f8ぐらいまで絞れば簡単にパンフォーカス(手前から無限遠までピントがきている状態)になるし、ぼかしたいときはオリンパスの12-40mmF2.835mm換算 24-80mm)などを開放で使えば、最短撮影距離が極端に短いのでフルサイズのようなボケ味も出せて重宝していました。

Photo by Subtle Cinematics on Unsplash

またレンズを含めたトータルの重量が抑えられるのも良い点です。超望遠レンズなどはフルサイズのレンズに比べて圧倒的に小さく軽いのも魅力ですね。

 

撮影で必須の周辺機器

撮影時の周辺機器といえば なくてはならないのは三脚ですね。今は大体2本持っていきます。1本は大型カメラ用にsachtler Video18s2を乗せたAOKAのTKPRO524C、もう一本はスチールカメラ用にsachtler FSB6Tを乗せた長脚のシステマティック三脚を常に持っています。2本とも使い勝手が良く安心感がありますね。

その他には7インチモニターですね。大型カメラでも8Kカメラなどでの撮影ではフォーカスが本当にシビアで、7インチモニター上でさらに拡大しないと合っていない時があったりします。ほんとビビります。

 

スチールカメラとビデオカメラの将来について

ドキュメンタリー撮影のように人の動きについて行ったり、予測ができない状況で目の前で起きていることを次々とサイズ(画角)を変えながら抑えていかなければならないような状況では、やはり従来のショルダータイプの大型ビデオカメラにズームレンズでなければ対応は難しいと思います。

一方ゆったりと大自然を見せるような撮影のリズムなら、フルサイズのスチールカメラを三脚に載せてじっくり撮ったり、スチールカメラをブームに装着して三脚に載せて簡易クレーンのようにして動きのあるショットを撮ったりと、スチールカメラの方がいろいろと撮影の工夫ができます。

要は撮影内容に応じてカメラも使い分けていくのがベターなんですが、そのためにはプランを立てて予測と準備を入念にし、その上でアイデアを具現化するためのスキルを身につけておかないと、最新のカメラや機材をうまく活かした画作り、作品作りができないということですね。プロにはそこが求められていると思います。

常に新しいカメラや機材を眺めてスペックを調べて、自分ならどう使うかを想像するのはすごく楽しいですよね。まだまだ新しい機材が出てくるかと思うとワクワクします!

システマティック三脚

トラベラー三脚

エクスプローラー三脚

ミニ三脚

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