AOKAのシステマティック三脚を、2年間使い倒した結果

カメラマン 柳瀬雅史様へのインタビュー 第1回

弊社より2年前に検証をお願いし、現在ではシステマティックからトラベラーまで購入し、現場で使用いただいている柳瀬 雅史様のインタビュー記事の第1回目をお届けします

今回は、AOKAのシステマティック三脚TKPRO524Cを実際に使い倒して、どのような良い点、悪い点があったのかをお話いただきました。

 

柳瀬 雅史

ヤナセ映像企画 代表取締役
1965年、東京生まれ。鞄手帳のメーカーに2年半ほど勤務後、24歳で映像業界へ転身。27歳で独立し、テレビカメラマンとなる。

以降、ドキュメンタリー番組等を経て、フリーランスとして自然番組を中心に活躍中。NHK「ダーウィンが来た!」や「ワイルドライフ」など国内外を問わず撮影を行っている。

 

-実際にAOKAシステマティック三脚TKPRO524Cを使用されてどうでしたか?

 この三脚を実際に触りだしたのは約2年前、現場への実践投入をしてからは約1年経ちましたが、今まで使ってきた大手メーカーのシステマティック三脚と全く遜色なく使用できたなという感想ですね。


 使ってて「あ、良いじゃん」と思ったのは、脚の伸縮がとてもスムーズなところでした。特に全体の締まりの良さだったり、ナットリングのスムーズさは違和感がないどころか、ストレスなく非常にスムーズに使えています。これって現場では凄い大事なところで、止まりが悪かったり、荷重がかかった時に緩んで沈み込んだりすると、それだけで撮りたいカットがいくつも撮れなかったりというところに影響しちゃうんですよ。

 そういう点でも、最新の機構をちゃんと取り入れているので、この価格帯で10数万のシステマティックと同じ使用が出来てしまうというのは、何とも嬉しいところです。


-段階調整の使用感はどうでしょうか?

 人によるかもしれませんが、この最低高ポジションというのはよく使います。ローアングルを撮るとき、僕らみたいな昔の人は”五徳”(ハイハット)を使ったり、テレビ局なんかでは今でも”ベビー”と呼ばれる別のものを用意したりして撮ってるんですが、それに対して、これはそのままフィールドでべチャっと求める低さにできるので、すごく撮りやすい。そして、この三脚で特筆すべきなのは、雲台下に絶妙なクリアランスが確保されているところですね。

 今まで使っていた大手メーカーのシステマティック三脚は、逆に下がりすぎてしまうところがありました。そうすると、雲台の下に手が入らなくて、水平が取れず、結果フィールドだと靴や石なんかで穴を掘らないといけないくらいでした。そこまでするのは僕くらいかもしれないですけどね。

 2段階目もかなりよく使います。最低高だと超ローアングル過ぎる、でもちょっと目線は下げたいっていう時は多くて、そんな時はこの2段階目を使うんです。この手の三脚はどれもこの高さはありますが、2段階目は非常によく使うポジションですね。

 あと、この手のシステマティック三脚で僕がよく使うのは、例えばベランダのような狭い空間なんかでカメラを回す時です。手すりがギリギリだったり、塀がせまっている場面なんかでは、同じ段階だと足を広げるスペースが足りなかったりします。そういう時は一部を完全に開脚して、他の脚は別の段階にしてといった感じに、それぞれバラバラの段階で水平を確保したりします。こういうのはフィールドでもよくあって、岩場なんかでの撮影では当たり前のように使ってます。昔からのやり方ですが、それが普通にできるのは非常に便利ですね。


-普段はどのくらいの重さまで載せますか?

 機材で言うと、普段使っているのがSONYのFS7 mark2というカメラです。僕の場合は動物や生き物の撮影がほとんどなので、普通に風景を撮るときはシネレンズだったりスチールの単玉(単焦点レンズ)を使いますが、一番多いのはB4マウントと呼ばれる2/3イメージャー用のプロ用レンズですね。そこに2.5倍のチューブ(テレコンバータ)をかませるので、結構前に出っ張っちゃいます。それでも10キロ程の重さですけどね。それをsachtler雲台の上に載せています。phantom flex 4kっていうハイスピードカメラを載せたりすることもありまして、それだと20キロくらいになってしまう事もありました

 時にはスチールカメラに簡易クレーンを使っての撮影なんかもあり、そういう時にもこの三脚を使ってます。


-本体の青グリップなどの色は問題ありませんか?

 あ、僕の場合はトータルの機材の量が多いので、実際は数グラムしか変わらないとしても、余計なものは全部外すっていうクセがあるんです。だから青いグリップも実は外しちゃっていました。

 「反射が不安」っていうのは、そこまで考えて無かったかな。もちろん、ガラス越しの撮影だったりすると、写る可能性はあるかもしれませんが、そこは僕の撮影環境ではあまり気にしてませんでしたね。


-使用する現場はどのような環境でしょうか?

 それはもう撮影するターゲットによってまちまちだけど、例えば田んぼで水生昆虫を撮る場合は、一番下の脚を3本とも伸ばして田んぼの中にズボっと埋めてしまったりします。あとは雨に濡れる生き物を撮ったりする時はもう雨ざらし状態ですね。

 まだ完全な海の、いわゆる塩のキツい環境で丸々一か月みたいな使用環境では使ったことがないので、そこはちょっと使ってみないと分からないところがあります。

 あとは砂浜だったり、砂漠の環境には既に持ち出したこともありますが、そこは今のところ問題無さそうですね。


ー各部の締め付けであったり、三脚の構造で困った部分などはありますか?

 他社との比較ってわけじゃないですが、脚の締め付け調整が普通の六角になってるのは、専用工具を必要としないので便利に感じました。メーカーによっては、ここが星形の特殊な締め付けになってたりもするので、ロケなんかでの出先で調整が必要な時は、現地調達もできたりするので便利ですね。今のところまだ緩んだのは1回くらいですけどね。


 こちら(写真)の段階調整の緩みがあったのですが、ここの締め付けはちょっと大変でした。スパナで回せはするのですが、モンキーレンチなんかだと入口部が狭くて、スパナでも中々入れづらいので、ここは専用の薄いスパナが付属すると嬉しいですね。


 それと、この三脚の段階調整はバネ式ではなく手動なので、できれば自動の方が嬉しかったです。もちろん、機構が増える分バネ式の方が壊れやすいという点はあるかもしれませんが、自動で戻ってくれた方がかなり早くセッティングができますし、自動で戻ることに慣れている人がこのモデルに乗り換えると、戻し忘れてそのまま使って固定されていないなんて事も考えられます。慣れの問題ではありますが、できればバネ式の自動の方が嬉しかったですね。


-他にあれば便利だった機構などはありますか?

 側面に1/4ネジが切り込まれていたら便利だなと感じました。直接本体にモニターを付けたりする事ができますからね。シネマ撮影の現場ではかなり重宝すると思いますよ。

 それと、本体にフックがついていると嬉しかったです。それこそ、かなりのレアケースかも知れないけど、アフリカ辺りの撮影では、車の外に出られない環境っていうのがあるんですよ。そうすると、窓のない素通しの車の荷台から撮影をしたりしますが、その時に車によっては固定用のフックがついていたりします。そのフックと三脚を、ザイルなんかで繋げて完全に固定する場面があったりするんですね。そういう時に下方向に何かを吊るすためのフックがあると便利ですね。

 あとは、船の上で固定したり、おもりを吊ったりする場面もあります。フィールドで使う上では、フックがあるとかなり楽で使いやすくなりますよ。


-現時点での総合的な評価はどうでしょうか?

 冒頭でも話した通り、約2年使ってみての感想は今まで使っていた仕事道具と変わらずに使えたという印象でした。違和感無く使えましたし、とくに脚の伸縮の滑らかさは非常にスムーズでとても良かったです。

 今後、まだ使用してみていない環境にどこまで耐えてくれるかは気になるところですね。

 


今後も柳瀬様には、お話を伺っていく予定です。第2回目のインタビュー記事も近日公開予定ですので、ぜひAOKA Newsにご登録ください。

コメントやお問い合わせ、ご質問などございましたら、お気軽にお寄せください。

 

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