三脚がない時、三脚代わりになるものについて

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撮影チャンスはいつ来るか分からない

 スマホに高画質カメラが付いているいま、身の回りで起きたことはいつでも撮影できるのが当然で、機材がなかったから撮れなかった、という言い訳はなかなかできません。森の中で目の前に鹿が現れたり、空に彩雲が現れたり、子どものふとした時の笑顔であったり…。残しておきたい瞬間はいつも唐突に訪れ、すぐに過ぎ去ってしまいます。私たちはそういう時すぐさま、その瞬間を記録せねばという気持ちに駆られカメラを構えます。

 ただし、とっさの手持ち撮影ではフォーカス、画角合わせに加えて手ブレとの戦いもあり、なかなか綺麗な映像を残すのは難しいものです。しかし、慌てて撮影したものであっても、できるだけそれは綺麗な映像であって欲しい、と思うのは自然な感情でしょう。

 また、慌てて撮る場面以外にも、出先で集合して映像を撮るときに、そもそも三脚を持っていないことだってあります。綺麗な映像を撮るために三脚は欠くべからざるものでありますが、ミニ三脚ならばいざ知らず、中型の三脚を常に携帯するのは、多くの人にとって現実的ではありません。

 今回は、慌てて撮影をする時や、三脚が手元にない時に、三脚並みとまではいかずとも、その代わりとして安定した撮影に使えるものや方法についてご紹介しようと思います。

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 (なお、ここではハンディカメラやデジ、一眼レフなどの小型~中型の動画撮影機器を想定しているため、ENGのように担げる機材やリグ、ジンバルを組んだ機材、アクションカムなどは当てはまらないことがあります。)

 

三脚の構造とカメラの安定

 三脚の構造において基本的かつ一番重要なのは、3点でしっかり安定して自立する、ということです。例えば一般的なテーブルのように4本足だと、全ての足が接地できずにガタガタ不安定になることがありますが、3点であればガタつくことはありません。

 この「3点」は、カメラを安定させる際の基本キーワードでもあります。三脚の原理とは異なりますが、三脚なしでも3点でカメラを支持することが重要で、腕2本を使って2点を確保するのに加え、残り1点に何を使うかで、色々な形での応用が可能です。

 その基本を踏まえ、三脚なしでカメラを安定して構える方法を見ていきましょう。

 

手持ち撮影を極める

1.自分自身を三脚化する

 まずは、一番身近な自分自身を三脚にしていく、ということを考えます。これは事前の訓練が必要ですが、慣れると、三脚ほどとまではいかなくとも、悪くない映像が手持ちで撮れるようになります。

 しかし、そもそも、人間は基本的に2本足ですので、そのまま直立した状態で三脚のように3点での安定を得るというのは困難です。

 周りを見回してみましょう。もし寄りかかれるような壁や木、柱などがあれば、そこに寄りかかってしまうのが一番手っ取り早く安定を得る方法になります。カメラを右手でしっかりと握り、左手を添えて両脇を締めて持ちます。次いで、右肩で寄りかかれるところに寄りかかってみましょう。身体と壁などで右上腕を挟むことで、カメラを主に持つ右手を固定できるので、両腕2点だけの支持ではありますが、ブレはかなり低減されます。

 

 周りに何か寄りかかるような物がない場合、咄嗟に移動する必要がなくアングルが変わっても問題ないようであれば、その場でしゃがみ込んでしまいましょう。お尻をつけてベタっと地面にあぐらをかき、両ひざの上に両肘を置いて腕を固定し、もしあればファインダーを覗きながら顔にカメラを押しつけると、3点での固定になります。モニターを使っている場合は、中型カメラであれば右肩に押し付けると3点が確保でき、小型であれば、胸のあたりに構えて覗き込むようなかたちでおでこに押し当てると3点で保持することができます。

 もし、座り込んでお尻が泥んこになるのが困る場合には、お相撲さんの蹲踞の姿勢をいったんとって、そのままお尻を深く落とすと、両腿で両肘を身体と挟むことができます。両肘が固定されるとカメラのブレは低減されますので、こちらも立ったままよりも全然ブレることなく、画角調整に集中することができます。

 寄りかかるものも見当たらず、しゃがみ込むことも難しい場合、立ったまま自分を三脚化することになります。

 足は肩幅くらいに開き、両足に均等に体重をかけましょう。少し前後に開いても良いですが、状況に合わせて判断してください。次に、しっかりと両手でカメラを握り、両肘をお腹に押し付けるようにすると、前腕の荷重がお腹にかかるのでカメラが安定します。できるならば、この2点に加えて右肩やおでこなどで3点目の支持をするとカメラはより安定します。ただし、無理な姿勢で3点目を支持しようとすると逆効果となり、かえってブレますので、事前に3点目を用いた支持が可能かどうか練習してみることをお勧めします。

  両腕での2点支持の際のコツとしては、両脇を締め、猫背気味に背を丸めて体の前方に軽く重心を持っていき、カメラを上から覗き込むように構えると、より安定するように私は思います。

 

2.知人を使う

 自分自身を使う以上に息が合うと安定するのは、他人を使うことです。望遠でブレてしまうときには、知人の肩を借りてみましょう。知人に自分の前にしゃがんでもらい、その肩にカメラを押し付け、肩越しに撮影します。自分はしっかりと脇を閉めて肘を自分のお腹に押し当て、カメラを知人の肩と自分で挟んで固定するとかなり安定するでしょう。撮影をするときにはお互いに息を止めることも大切です。

 

三脚のような安定感を求める場合

 いくら筋トレをしても安定した立ち方を練習しても、手で持つ場合、ある程度の振動やブレは避けられません。手持ちの味わいは効果的に使えばとても格好いいものですし、緊急で何かを撮るときは上記の方法で十分見ることのできる映像を撮影できると思いますが、三脚のような安定感がもし必要だとすれば、それを手持ちで再現するのは極めて困難です。

そこで、そういう場合は別の方法を使います。


1.地面にカメラを置く

 まず、地面にカメラを置く、という原始的な方法があります。カメラが土だらけになるのが嫌であれば下にティッシュやハンカチを敷くとよいでしょう。コピー用紙やブルーシートなどは風にあおられると音が出てしまい、同時録音の妨げになります。

 この時、ただカメラを地面に置くだけだと、画角の下半分ほとんどを地面が占めてしまって映像としてはよくないものになりますので、画角をチェックしながらカメラを少し上に向けると良いでしょう。カメラの上下調整はその辺に落ちている小石か、手持ちのボールペンなどをレンズや本体の下に入れて調整します。


2.リュックサックの上に置く

 もう少し高さが必要な場合、背負っているリュックサックを地面に置いて、その上にカメラを置く方法があります。適宜リュックサックの中身を調整して高さと安定性を確保してください。やわらかい上着などがあれば、それをリュックの上部に詰めると、カメラが包み込まれるようになり、よりよい安定を得られます。


3.車のボンネットに置く

 更に高さを稼ぎたい場合、車のボンネットにカメラを乗せる方法があります。直接カメラを置くと傷が入ってしまったりカメラが滑って落っこちてしまうので、百均などで売っている滑り止めマットを下に敷くとよいでしょう。

 またボンネットはフロントに行くにしたがって下がっていくのが一般的ですので、場合によって小枝やペンなどでティルト方向に調整をしましょう。

 くれぐれも他人の車に無断で置かないようにしましょう。トラブルになって良いことは何一つありません。

 

※滑り止めマットは車のボンネットだけでなく、例えば杭の上などにカメラを置いて記念撮影をするときにも便利な道具です。

 

どこかに置く場合、録画中のカメラには触らないこと!

 地面に置く、リュックサックに乗せる、車に乗せる、これらすべてに共通して、録画が始まったら絶対にカメラに触らない、ということを厳守する必要があります。触ってしまうと細かい振動がカメラに伝わって映像がブレ、失敗してしまいます。

 上記、1~3の方法を用いる場合には厳密な水平を出すことは期待できませんので、画角を追い込みすぎずに少しルーズ目で撮影し、編集段階で水平を出すことをおすすめします。現地で水平を出そうとすると無駄に時間を食ってしまいますので、時には潔く、後工程に任せることも重要です。

 他にも、おなかに押し付ける方法、腹ばいになる方法、膝に置く方法などなど数多の方法が存在します。ぜひ、色々なアングルにおけるご自身とカメラの相性の良いスタイルを探ってみてください。


三脚があるなら使ったほうがいい

 最後に、もし手元に三脚があるのであれば横着して手持ちで撮るのではなく、少し時間がかかっても三脚を使って撮ったほうが後悔しないことが多い、ということを付け加えたいと思います。

 急に現れた野生動物を撮るならいざ知らず、例えば虹であれば、そんなにすぐには消えませんので、落ち着いて三脚を立ててから撮影したほうが、結果としてよい映像が撮れることでしょう。特に虹のような綺麗な情景ショットがフラフラと手ブレしているのは、やはり見苦しいものがありますし。

 ですから、三脚なしでのカメラの構え方を練習するのはとても大切ですが、三脚を素早く正確に立てる練習も並行して行っておくと、本番で大変重宝することと思います。


(パートナービデオグラファーZ)

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